越境カンファvol.8 多視点報告
第8回越境カンファでは、「人間が生きる上で音楽は必要か? 」 をテーマに多種多様な視点・切り口でディスカッションを行いました! 当日は東京藝術大学で西洋の音楽歴史を学び、現在フランスのパリに留学しています岡田美夏さんをお招きしました!今回もカンファで出てきた注目のトピックの要約をそれぞれご紹介していきます!
第8回越境カンファでは、「人間が生きる上で音楽は必要か? 」 をテーマに多種多様な視点・切り口でディスカッションを行いました! 当日は東京藝術大学で西洋の音楽歴史を学び、現在フランスのパリに留学しています岡田美夏さんをお招きしました!今回もカンファで出てきた注目のトピックの要約をそれぞれご紹介していきます!
越境カンファvol.8 概要
第8回越境カンファでは、「人間が生きる上で音楽は必要か?」というテーマのもと、実用的ではない音楽とはどんなものか、芸術・文化が発展していくための課題など、音楽の在り方を岡田さんとともに考える会となりました。
プレゼンター: Mika Okada (フランス/音楽学)
【問いの設定】
Q1. 皆さんは普段どのような時に音楽を聴きますか?また、音楽を聴くとどのような効果が得られますか?
Q2. 実用的な目的を持って作られていない音楽の存在意義とは?
【今回のポイント】
皆さんにとって音楽とはどのような存在でしょうか。
音楽と全く関わらない人生を送る人はほとんどいないと思います。街中では常にBGMが流れていますし、好きなアーティストのライブに行く等、積極的に音楽を聴く方も多いでしょう。
音楽の起源は明らかになっていないようですが、旧石器時代の楽器が出土していることから、人間と音楽は非常に長い付き合いだということが分かります。音楽は宗教儀式や労働促進など実用的に機能するものから、娯楽や鑑賞を目的としたものまで、実に多くの種類が存在します。
私たちはなぜここまで音楽と密接に関わり続けているのでしょうか。音楽の必要性は抽象的な言葉で語られることが多いと思いますが、今回はなぜ人間が音楽を必要とするのか、もう少し具体的に掘り下げていきたいと思います。みなさんも普段自分が聴いている音楽を足がかりに、音楽について一緒に考えてみましょう。
プレゼンターのまとめ
音楽を含めた芸術は金銭的・時間的に余裕がある人の娯楽に過ぎないという考え方が多く見受けられる。確かに音楽は直接人間の命を救うわけではないし、音楽が直接経済を発展させることはないかもしれない。
音楽は18世紀中葉以前は実用的な側面が強かった。音楽に美的価値を認めて鑑賞を楽しむという機能はそれ以降の時代に獲得したものである。
今回は実用的な目的を持って作られていない音楽の存在意義を考えるところからディスカッションがスタートしたが、そもそも実用的な音楽とそれ以外の音楽との線引きが難しいという意見が出た。たとえば教会の音楽は、作曲者は教会の儀式で使用するという実用的な目的に基づいて作曲しているが、聴取する側はその音楽に美的価値を認めて鑑賞を楽しんでいるかもしれない。様々な音楽や聴取方法が存在する現代では、ある音楽が実用的かどうかを判断することは難しく、また実用的という言葉の定義も曖昧だったため議論が多少難航した。
次に芸術を芸術たらしめるものとは何だろう、また何が音楽を芸術にしているのかという話を踏まえた後、もう一度同じテーマでディスカッションを行った。
実用的ではない音楽(たとえばクラシック音楽)は日本でどのような方法を取れば広く聴かれるようになるのか、という議論や、実用的か否かという線引きをすること自体が問題なのではないか、という議論があった。
今回は様々な分野の人が同じテーマで議論するカンファレンスのため、自分の専門分野であるクラシック音楽にとらわれずにより広いテーマを設定したが、その結果言葉の定義が曖昧だったり、終着点が定まらず議論が流れていってしまうという課題点が見つかった。しかし、普段何気なく聴いている音楽の存在意義や、音楽がどのようにして生まれてどのような歴史を辿ってきたかを考える良い機会になったのではないかと思う。
音楽(芸術)は文化的伝統を体現しながら常にアップデートされ続けており、新しい価値観を生み出し続けている。それが人間の文化的活動の本質であり、その流れを断ち切ることは人類にとって大きな損失なのではないか、というのが私の考えである。